歯科口腔外科
-親知らずの抜歯・顎関節症・腫瘤(でき物)・粘膜疾患・外傷など―
1.親知らずの抜歯
そもそも親知らずとは
親知らずの正式名称は第三大臼歯と言い、18歳前後から生えてくる前歯から数えて8番目の歯のことを指します。
本来は上あごの左右2本と下あごの左右2本の計4本ありましたが、元々親知らずがない場合や、一部だけ生えてくる場合など人それぞれです。永久歯の中では最後に生えてくるため、スペースの問題で横に傾いて生えてきたりそのまま歯茎の中に埋まったままになってしまったりなどの場合があります。
抜かなければいけない親知らず
親知らずは全て抜かなければいけないというわけではありません。
上下の親知らずが噛み合っていて、歯磨きもしっかりとできていれば抜く必要はありません。
しかし、生え方が斜めになっており他の歯に影響を及ぼすような場合や、歯茎に炎症が起こるような場合には抜く方が良いと判断されます。
不自然な生え方をした親知らずを放置していると、正常に生えている他の歯を押してしまい、全体の歯並びに悪影響を及ぼす可能性もあるため、早めに歯科医院で相談しましょう。
術後に顔は腫れるの?
よくご心配されている方が多いのが、術後の顔の腫れについてです。これは、歯の生え方と術式によって決まります。
術後に腫れる場合は、一般的には術後2日をピークに腫れて、3日目以降徐々に引いてきます。
術後に腫れがでない親知らずもあり、術式の工夫で腫れを軽減することもできます。
患者さん一人一人、状況は千差万別ですので術前にしっかりご説明させていただきます。
当院では、大学病院口腔外科で多くの親知らずの抜歯術を行ってきたドクターがおりますので安心してご相談ください。
抜歯って痛いの?
術中に痛むのかというとことも、皆さま気にされていることと思います。
一般的には、局所麻酔を行うことで術中は無痛で行うことが可能ですのでご安心ください。
術後は、痛みが出ないこともありますが、ほとんどの場合は痛み止めのお薬で痛みに対応します。
早めに抜いたほうがいいの?
早めに抜くことをおすすめします。
なぜかというと、早めに抜かないと以下2つの理由により、歯の周りの骨が硬くなってしまうからです。
①人の骨は歳を重ねるごとに硬くなる
元々、骨は歯より軟らかいです。歯の周りの骨が粘土のように変形してくれることで歯を抜くことができます。
親知らずは骨の中に埋まっていることが多く、骨の硬さによる影響をかなり受けます。
人の骨は年を重ねるごとに硬くなっていくので、早めの抜歯をおすすめします。
②炎症が長い間続くと骨が炎症性の骨硬化を起こす
痛みが出たり引いたりを繰り返して、痛くなくなったから抜歯しなくても良いのではないかと、対症療法でしのいで炎症を長引かせてしまうことは、あまりおすすめできません。
歯の周りの骨を失ってしまう上、炎症性の骨硬化といって歯の周りの骨が硬くなってしまうことがあります。
炎症を起こしている状況では麻酔も効きにくく、術後の治癒も通常より遅れてしまいます。
抜歯が怖いとお考えの方のお気持ちもよくわかりますが、是非早めにご相談ください。
2.顎関節症治療
顎関節症とは
顎関節症とは、字の通り顎の関節周辺に痛みや違和感を覚える病気です。
口を大きく開けたり、物を噛んだりした際に痛みが走ったり、顎部分がカクカク鳴るような場合は顎関節症の恐れがあります。放っておいて自然治癒する場合もありますが、症状が悪化すると顎だけでなく頭痛や肩こり、めまいなど様々な症状につながる可能性もあります。
特に女性に多く、20~30代の方を中心にここ数年急増している病気です。
顎関節症の原因
ストレスなどの生活習慣が原因の一つと考えられていますが、まだ詳しいことは解明しておらず、研究が進められている段階です。また、顎が痛む原因は歯に関係するとされており、虫歯治療のかぶせ物や金属が壊れて噛み合せが悪くなっていたり、左右一方の側で噛み続ける癖がついていたりすると顎関節症になりやすいとされています。
このように噛み合せが悪い状態を長年放置し続けると、顎の関節に過度な負担がかるため、早期に治療しておくことが大切です。
関節症の治療方法
顎関節症は歯科での治療が一般的です。噛み合わせの悪い部分の歯を治療し、バランスの良い歯並びを目指します。
マウスピースをつけることで顎の負担を軽くし、筋肉のバランスを整えるスプリント療法という方法があります。
症状が重い場合には、内視鏡下手術などの外科手術により顎関節を治療する場合もあります。
セルフケアも大切
歯科治療と同時に、生活習慣の改善指導も行います。
顎関節症は頬杖や歯ぎしりなどの悪癖が症状を重くしている場合が多くなります。そのため、患者さん自身にそのような生活習慣を自覚し改めていただくことで、再発防止につなげてい、ます。
硬い物を長時間噛まないようにし、口を大きく開けすぎないよう気を付けましょう。また、痛みが酷い場合にはマッサージを行い、患部を温めると効果的です。
3.腫瘤(でき物)
唇や頬、舌などにできた腫瘤(でき物)の診断および治療を行います。
腫瘤とは、唇や頬、舌などの軟組織にできた膨らみのことです。原因や病名は多岐に渡るため、実際に医院で所見を取らせていただき、臨床診断をすることが重要となります。
当院では、悪性腫瘍(がん)やその他の腫瘍ではないかどうかを鑑別したほうが良いと判断した場合には、切除した腫瘤をホルマリンに漬けて大学病院へ郵送し、病理検査を行い確定診断することができます。
4.粘膜疾患(口内炎、舌痛症、カンジダ症、帯状疱疹、ヘルペス、手足口病、扁平苔癬、白板症など)
お口の中の粘膜に痛みがある場合や、水泡や白いものができている、口内炎がしばらく治らないなどの変化に気づいた場合には、お早めにご相談ください。
5.外傷
歯の破折・脱臼
転倒などの理由により歯が折れてしまった場合は、折れている箇所を診断し、歯を残すことができるのかできないのか、歯の神経の処置が必要になるのかそうではないのかなど治療計画を立てて処置していきます。
また、脱臼といって、歯が抜けそうになった状態や、完全に抜け落ちてしまった場合は、お口の中に戻して生着することがあります。歯の根の周りについている細胞(歯根膜細胞)がどの程度生存してるかにより生着率が変わってきます。もし、歯が抜け落ちてしまったら、抜け落ちた歯を、生理食塩水の中に保管するか、口腔内に保持しておくか、牛乳の中に漬けておくかなどの方法で細胞が生存できる環境に置くことが大切です。いずれの場合も、できるだけ早く処置することが必要ですので、速やかにご連絡ください。
口唇などの裂創
お子様に多いのが口唇などの切り傷です。転倒してお顔をどこかにぶつけてしまい、下の前歯が下唇を貫通してしまったなんていうことも珍しくありません。その場合は、お口の中の異物を取り除くための清掃(デブリードマン)を行ったのち、傷口を縫合します。縫った糸は術後約7日で抜糸します。